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SSはスクリーンショットの略だけじゃないよ!!

 その時の、兄の表情を、俺は良く覚えてはいないけれども。

 穏やかな風の吹く丘。抜ける風にさざめく草の歌声も、優しい草の匂いも、とても気に入っていた。ここは、俺と兄、二人のお気に入りの場所だった。
 夕刻、世界が金色に包まれる瞬間が、何よりも好きだった。
 金の光を透かす、兄の銀糸のような髪を見つめながら、これからもずっと側にいるのだと、信じて疑わなかった。
 他の誰と過ごすよりも、兄と一緒に過ごす事の方が多かった。
 同じ日に生を受け、共に生きてきた半身。
 光と闇を互いの身に分け合い、対の存在として育てられてきたけれど。
 他の誰よりも、兄の事を理解していると思っていたし、同じように兄も、俺の事を理解してくれていると思っていた。


……だからこそ、先程の言葉が信じられなくて、俺は困惑していた。
「……カバリアに、行きます」
 不意に風が途切れた瞬間、耳に滑り込んできたのは、先程紡がれたものと同じ言葉だった。
 その言葉を俺が理解するまで、兄はただそのまま微笑んでいた。
「……なんで?」
 理解と共に零れたのは、たいそう間抜けな問いかけだっただろう。
 けれど、呆然とした頭では、それを問うだけで精一杯だった。
 胸を突き上げていたのは、どうしようもない喪失感。幼い頃から一緒にいて、これからもずっと一緒にいるのだと、信じて止まなかった。
 それは、ただの幻想だったのだろうか。
 彼は、一人で行くと言う。見知らぬ土地へと。
「サージェン。私はね、どこまでやれるか、試してみたいんです」
 ひどく優しい声音で俺の名を呼び、兄は一層笑みを深くする。その瞳は、真っ直ぐに俺を見つめているけれど、どこか遠い。
「自分を、知りたいんです。自分が、どれほどのもので、世界はどれほど大きいのか。それを知るには、ここにとどまっていては駄目なのだと気付いたんです。……だから、ね、サージェン。私は、カバリアへ行きます」
 その瞳は、もう俺を映してはいないのだと、知った。
 置いていくつもりかと、思う。
 一人にするのか。半身を置き去りにして行くのか。
 己を知るために。……遠くへ行ってしまうのか。
 責めるような言葉が胸の中を渦巻き、俺はただ目を閉じた。
「……好きに、すれば良い」
 荒れる胸の内を押さえ、ぎこちなく口にした言葉。
 その言葉に、兄はどんな表情をしたのか、俺は知らない。


 寂しいと、独りにするなと口にすれば、兄はとどまったのだろうか。
 それとも、一緒に連れて行ってくれたのだろうか。
 今となっては、分からない事だけれども。
 兄の無事を祈り、ただ待つなんてことが、俺の性ではないのは確かな事で。
 見知らぬ土地、見知らぬ匂い。今まで知らなかった事が、一度に飛び込んでくる新鮮さ。兄と二人だけでいた世界とは違う、その過酷さも。
 いつかは、きっとかけがえのない思い出になるだろう。


 俺も、今は、カバリアにいる。










へんたいこーる


やっているのは、こんなアホな事ばかりだけどな!!
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Author:サージェン
オーロラ鯖で活動中の、まったりのんびり龍。

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